字 | IPA | X-SAMPA | 説明 |
---|---|---|---|
’ | [h] | [h] | 無声声門摩擦音 [θ] などの、ロジバンで他に使われていない無声摩擦音に代えても良い。 |
, | — | — | 音節分離 |
. | [ʔ] | [?] | 声門閉鎖または休止 |
a | [a], [ɑ] | [a], [A] | 非円唇前舌広母音、非円唇後舌広母音 |
b | [b] | [b] | 有声両唇破裂音 |
c | [ʃ], [ʂ] | [S], [s`] | 無声後部歯茎摩擦音、無声そり舌摩擦音 # 後部歯茎で発音するので、日本語のシの子音よりも舌を奥に引っ込める。 |
d | [d] | [d] | 有声歯茎破裂音 |
e | [ɛ], [e] | [E], [e] | 非円唇前舌半広母音、非円唇前舌半狭母音 |
f | [f], [ɸ] | [f], [p\] | 無声唇歯摩擦音、無声両唇摩擦音 # [ɸ] は日本語でファフィフフェフォの子音。 |
g | [ɡ] | [g] | 有声軟口蓋破裂音 |
i | [i] | [i] | 非円唇前舌狭母音 |
j | [ʒ], [ʐ] | [Z], [z`] | 有声後部歯茎摩擦音、有声そり舌摩擦音 |
k | [k] | [k] | 無声軟口蓋破裂音 |
l | [l], [l̩] | [l], [l=] | 歯茎側面接近音(音節主音となりうる) |
m | [m], [m̩] | [m], [m=] | 両唇鼻音(音節主音となりうる) |
n | [n], [n̩], [ŋ], [ŋ̩] | [n], [n=], [N], [N=] | 歯茎鼻音、軟口蓋鼻音(音節主音となりうる) 特に [ɡ] や [k] の前では [ŋ] になりやすい。ロジバン化された名前では [ŋ] 音が語頭や語尾に置かれても良い。 |
o | [o], [ɔ] | [o], [O] | 円唇後舌半狭母音、円唇後舌半広母音 特に r の前の o は [ɔ] になりやすい。 |
p | [p] | [p] | 無声両唇破裂音 |
r | [r], [ɹ], [ɾ], [ʀ], [r̩], [ɹ̩], [ɾ̩], [ʀ̩] | [r], [r\], [4], [R\], [r=], [r\=], [4=], [R\=] | 歯茎ふるえ音、歯茎接近音、歯茎はじき音、口蓋垂ふるえ音(音節主音となりうる) # [ɾ] は日本語で「そら」の「ら」の子音。 |
s | [s] | [s] | 無声歯茎摩擦音 # 第10節で「[ʂ] 無声そり舌摩擦音も可」と書かれているが、第2節の表では [ʂ] は c の音に当てられているので、一意的でなくなってしまう。 |
t | [t] | [t] | 無声歯茎破裂音 |
u | [u] | [u] | 円唇後舌狭母音 |
v | [v], [β] | [v], [B] | 有声唇歯摩擦音、有声両唇摩擦音 [β] はスペイン語で母音の間の b や v の発音。ロジバンの b の発音に、この音を使ってはいけない。 |
x | [x] | [x] | 無声軟口蓋摩擦音 |
y | [ə] | [@] | 中舌中央母音、円唇も可。 |
z | [z] | [z] | 有声歯茎摩擦音 # 第10節で「[ʐ] 有声そり舌摩擦音も可」と書かれているが、第2節の表では[ʐ] は j の音に当てられているので、一意的でなくなってしまう。 |
アポストロフィ、ピリオド、コンマには特別注意が必要である。これらはすべて音節区切り(# division between syllables)の指標として使われる。 しかし、それぞれは異なって発音されるし、各々異なる理由で使われる。
アポストロフィ「'」は英語の"h" (IPA [h])に近い音素を表す。しかし、文字 "h"はこの音を表すのには使わない。これには理由が2つある。 まず、形態論の説明を簡潔にするためであり、それから、この音がかなりありふれたものであるため、すっきりした見た目で表現したいからである。 アポストロフィの音は本来的には子音だが、ロジバンでは形態論の目的から子音や母音として扱わない。 加えて、見た目が似ているコンマやピリオドと同様、アポストロフィも(用途は異なるが)音節の分離に使われる。
アポストロフィは、母音同士を1つの単語内で繋げる一方で、母音同士の滑らかな分離を可能にする。 実際、アポストロフィを無声の母音わたり音(# glide)とみなすこともできる。
ロジバンで使われない無声摩擦音なら何でもアポストロフィの許容な異音として使える。 [h]の代替音を使おうとする際は、聞き手の利便が最優先されるべきである。
ピリオド「.」は義務的な小休止を表すが、その長さに決まりはない。声門破裂音(IPA [ʔ])は最も短い長さの小休止とみなす。 小休止(あるいは声門破裂音)は任意の単語間に現れてよいが、特定の場合(4章で詳述)では必須である。 特に、母音で始まる単語では単語の直前に必ずピリオド音を置き、子音で終わる単語ではその直後に必ずピリオド音を置く。
専門的な話をすると、義務的な小休止を付すべき位置についての法則は非曖昧であるため、たとえその位置にピリオドがなくとも、 他の正しい文章から推察できる。そのため、ピリオドはもっぱら義務的な小休止の読み手にとっての備忘録であり、読み手を手助けするものである。
一見、単語内にピリオドがあるように見えることがあるかもしれない。この場合、そのような文字列は1単語ではなく2単語である (# ピリオドが文字列を2単語に分割する)。ピリオドがあるなら、必ずしも単語間に空白を置く必要はないのである。
コンマ「,」は、単語内の音節区切りを示すのに使われ、ふつうはその音節の区切り方が聞き手にとって明白ではないときに用いられる。 コンマは音節を区切るが、ピリオドと対照的に、そこに小休止が(絶対に)ないことを示す。 2つの母音の間のコンマは、(そこで単語を区切ってしまう)小休止、ピリオドを避けるために、 ある種のわたり音が必要かもしれないということを示す。この場合、コンマを発音するのにアポストロフィ音(IPA [h])を使えば安全である。 一方で、ピリオドの音(小休止や声門閉鎖音)は単語を区切ってしまうため、コンマの発音には使えない。
もしくは、コンマは、大抵、音節子音な "l", "m", "n", "r" の存在を明確化するために使われるのみである。 この場合、コンマは本質的に不要である:すなわち、コンマの有無によってロジバンの単語が変わるようなことはありえない。
ここで、ピリオド、コンマ、アポストロフィ間の発音における違いについて、幾ばくか人工的なものではあるが例を挙げる。(# 日本語訳では『ゆかいな牧場』として知られる)マクドナルドおじさん(# 日本語訳では「一郎さん」)の牧場についての英語の歌にある、 "ee-i-ee-i-o" 「イーアイイーアイオー」という母音列はピリオドを使うと次のようにロジバン化できる:
3.1) .i.ai.i.ai.o [?i ?aj ?i ?aj ?o] イー、アイ、イー、アイ、オー!しかしながら、これは元の発音に比べて、ぶつぎれだし、スタッカートだし、音楽的ではない。 さらに、例 3.1 は有意味なロジバンの単語列({.i}、{.ai}、{.i}、{.ai}、{.o})ではあるが、文としてはかなり意味不明なものである。 (筆記上の単語内にあるピリオドの用法に注意 (# おそらく、「筆記上は1単語にみえるが、実際はピリオドによって複数の単語に分断されていることに注意せよ」ということ。))
代わりにコンマを使った場合を考えてみよう。最後を子音 "n" にして、ロジバン化された名前として元の文字列を表せそうである:
3.2) .i,ai,i,ai,on. [?i jaj ji jaj jon?]これらのコンマは新しい音節区切りを表すが、小休止/声門破裂音ではない。 上記の発音は1つの可能性にすぎないが、目指している英語の発音とかなり近い。
しかし、このようにコンマを使うと、コンマの発音に用いたわたり音([j])が二重母音のように捉えられる可能性があり、解釈が曖昧になりえてしまう:
3.3) .i,iai,ii,iai,ion. [?i jaj ji jaj jon?]これは専門的にはさっきと異なるロジバン名である。私たちはふつう、元となる名前とより近い発音になるようにロジバン名をこしらえようとするので、 わたり母音や非ロジバン的な音をコンマで表せるようにするのは妥当である。このような例外は、綴りの正確さと、聞き手が(話者にとって)望ましい発音を確実に繰り返せるかどうかに影響を与えるだけであり、単語の境界の認識には影響を及ぼさない。
それでも、ロジバン名が常に明瞭であるなら、それはより良いことである。 よって、非ロジバンな発音を完璧に真似ようとせず、アポストロフィを用いて規則的なロジバン名を作るのが好ましい (そもそも、完璧というのは、いくつかの音はロジバンにまともな代替音がないという単純な理由から、どんな状況であれ達成できない。)
アポストロフィを例 3.2 のカンマの代わりに使えば、次のようになる:
3.4) .i'ai'i'ai'on. [?i hai hi hai hon?]これは、厳密には音の感じが異なるものの元のリズムも長さも保持している。
どの種類の単語にも使われるもの:
ai [aj],
ei [ɛj],
oi [oj],
au [aw]
独立した単語として使われるか、ロジバン化された名前・借用語の中で使われるもの:
ia [ja],
ie [jɛ],
ii [ji],
io [jo],
iu [ju],
ua [wa],
ue [wɛ],
ui [wi],
uo [wo],
uu [wu]
ロジバン化された名前の中でのみ使われるもの:
iy [jə],
uy [wə]
a'a a'e a'i a'o a'u a'y e'a e'e e'i e'o e'u e'y i'a i'e i'i i'o i'u i'y o'a o'e o'i o'o o'u o'y u'a u'e u'i u'o u'u u'y y'a y'e y'i y'o y'u y'yai, ei, oi, au など、アポストロフィが無いと二重母音になる組もある。
母音が3つ以上連続する場合は、先に出てくる2つが優先的にペアとして扱う。
5.1) meiin. mei,in.例 5.1 は二重母音 "ei" とそれに続く母音 "i" からなる。異なる母音のまとまりを表すにはコンマを用いる。
5.2) me,iin.これは、母音 "e"とそれに続く二重母音 "ii" からなる。
おおよそ英語で表すとすれば、例 5.1は "May Een"であり、例 5.2は"Meh Yeen"と書ける。
ロジバン化された名前では、4個以上の子音が連結できる。 それ以外の単語では3個まで。
子音が連結するための条件:pl pr fl fr bl br vl vr cp cf ct ck cm cn cl cr jb jv jd jg jm sp sf st sk sm sn sl sr zb zv zd zg zm tc tr ts kl kr dj dr dz gl gr ml mr xl xr
r | l | n | m | b | v | d | g | j | z | s | c | x | k | t | f | p | |
r | rl | rn | rm | rb | rv | rd | rg | rj | rz | rs | rc | rx | rk | rt | rf | rp | |
l | lr | ln | lm | lb | lv | ld | lg | lj | lz | ls | lc | lx | lk | lt | lf | lp | |
n | nr | nl | nm | nb | nv | nd | ng | nj | nz | ns | nc | nx | nk | nt | nf | np | |
m | mr | ml | mn | mb | mv | md | mg | mj | ms | mc | mx | mk | mt | mf | mp | ||
b | br | bl | bn | bm | bv | bd | bg | bj | bz | ||||||||
v | vr | vl | vn | vm | vb | vd | vg | vj | vz | ||||||||
d | dr | dl | dn | dm | db | dv | dg | dj | dz | ||||||||
g | gr | gl | gn | gm | gb | gv | gd | gj | gz | ||||||||
j | jr | jl | jn | jm | jb | jv | jd | jg | |||||||||
z | zr | zl | zn | zm | zb | zv | zd | zg | |||||||||
s | sr | sl | sn | sm | sx | sk | st | sf | sp | ||||||||
c | cr | cl | cn | cm | ck | ct | cf | cp | |||||||||
x | xr | xl | xn | xm | xs | xt | xf | xp | |||||||||
k | kr | kl | kn | km | ks | kc | kt | kf | kp | ||||||||
t | tr | tl | tn | tm | ts | tc | tx | tk | tf | tp | |||||||
f | fr | fl | fn | fm | fs | fc | fx | fk | ft | fp | |||||||
p | pr | pl | pn | pm | ps | pc | px | pk | pt | pf |
8.6) bongynanba [boŋ gə ˈnan ba]ロジバンの lujvo としてありうる bongu + nanba 「骨パン」。
8.7) bongnanba [boŋ ˈgnan ba]借用語としてありうる。 例 8.7 の [g] と [n] の間に緩衝音を入れると
8.8) [boŋ gɪ ˈnan ba]となり、 例 8.6 の発音に近くなる。この2語を区別するために、母音 y の音と緩衝音を発音し分ける必要がある。
8.9) [boːŋ gɪ ˈnaːn baː]
9.14) le re nobli prenu le re NObli PREnu 9.15) le re no bliprenu le re no bliPREnuもし例 9.15 の no にアクセントを置いて、しかもその後に休止をしないと、例 9.14 と同じ発音になってしまう。このようなことを避けるための規則。