文責 hatthin 2011/1/19
The Lojban Reference Grammar
A Quick Tour of Lojban Grammar, With Diagrams
第2章 ロジバン文法概説
1. ブリディの(bridi)の概念
この章では例文を用いて、基本的なロジバン文の構造を示す。
概説であり、細部については後の章で扱う。
ジョンとサムに関する次の3つの例文を見てみよう。
1.1) ジョンはサムの父親だ。
1.2) ジョンはサムを殴る。
1.3) ジョンはサムよりも背が高い。
この3つの例文は、すべてジョンとサムの関係について記述したものである。
例文1.1のような 静的な関係 を記述するときには、 名詞 <父親>を用いる。
例文1.2のような 動的な関係 を記述するときには、 動詞 <殴る>を用いる。
例文1.3のような 連体(限定)的な関係 を記述する時には、 形容詞 <高い>を用いる。
ロジバンでは、そのような文法的は区分はなく、上の3つの文は構造的に同一であり、その関係を表すのに同一の品詞が使われる。
ロジバンでは、 命題 <predication>のことを ブリディ <bridi>と呼び、その中心的な品詞(#上の例では、名詞、動詞、形容詞に相当)を、 セルブリ <selbri>と呼ぶ。
項 <argument>に当たるものは、ロジバンでは スムティ <sumti>と呼ぶ。
#訳者補注
<スムティ> <セルブリ> <スムティ>
ジョンは 父親だ サムの
ジョンは 殴る サムを
ジョンは 背が高い サムよりも
たとえば、<与える>は3つの構成要素からなる。
(1)<授与者>、(2)<収受者>、そして(3)<贈与物>である。
この3つの要素が スムティ であり、<与える>に当たるものが セルブリ である。
1.4) ジョンは本をサムに与える。
1.5) サムは本をジョンに与える。
1.6) 本はサムをジョンに与える。
#訳者補注
<スムティ> <セルブリ> <スムティ> <スムティ>
ジョン は 与える 本 を サム に
サム は 与える 本 を ジョン に
本 は 与える サム を ジョン に
<者は>の場所 <物を>の場所 <者に>の場所
3例とも<与える>によって表現される文の関係は同一である。
(最後の例文は、意味的には変だが)
セルブリは、その 場所構造(place stracture以下、PSと略す) によって一定数の、特定のスムティを持つ。
最も単純なセルブリは、 ギスム <gismu>と呼ばれる根語<root word>から成り立つ。
発音とつづりについては3章で詳細される。ここでは概略を示す。
ロジバンには、以下の 6つの母音 がある。 “a”, “e”, “i”, “o”, “u” and “y”
最初の5つは、だいたい以下の単語の母音に相当する。
“father”の“a” 、“let”の“e” 、 “machine”の“i” 、“dome”の“o”、 “flute”の“u”
“y” は、 あいまい母音 である。“about” や “around”の“a”に相当する。
ロジバンには、 12の子音 がある。英語の以下の子音に相当する。
“b”, “d”, “f”, “k”, “l”, “m”, “n”, “p”, “r”, “t”, “v” and “z”
“c”は、“hush”の“sh” のように発音される。 “j” は、“pleasure”の“s” のように発音される。
“g” は、つねに “gift”の“g”のように発音される。
“s” は、つねに“sell”の“s”のように発音される。
“x” は、英語にはない発音であり、スコットランド語の“loch” の “ch” や、スペイン語の“junta”の“j”や、ドイツ語の“Bach”の“ch”のように発音される。
“r” は、巻き舌にしてもしなくてもよい。
ロジバンの二重母音 “ai”, “ei”, “oi”と“au” は、英語の以下のものと同様である。
“sigh”, “say”, “boy”, and “how”.
“i” で始まる二重母音は、英語の “y”のように発音される。 (“io” は “yo”のように)
“u”は、 英語の “w”のように発音される。 (“ua” は“wa”のように)
ロジバンは、 ピリオド <.>、 コンマ <,>、 アポストロフィ <’>を 準文字 として扱う。
ピリオドは、声門閉鎖音、あるいは休止を表わす。
アポストロフィは、英語の “h”のような発音を意味する。
それは、他の子音とは違って、単語の最初と最後には使われないし、他の子音と連続して使われることもない。母音の間にのみ使われる。.
コンマは、通常であればつながって発音される音節を区切る時に使われる。
アクセント は、すべての単語の最後から2番目の音節にある。
ただし、“y”は あいまい母音 でアクセントは置かれないので、それが2番目にあるときには3番目の音節にアクセントが置かれる。単音節の単語にはアクセントは置かれない。
すべての単語は、つづられるように発音される。発音されない文字はない。
以下の語はそれ自体でスムティとして使われる語の例である。
mi 私・私たち
do あなた・あなたたち
ti これ・これら
ta それ・それら(あれ・あれら)
tu あれ・あれら
zo'e 不特定項(スムティが重要でなかったり、不特定の場合に使う)
ロジバンは、 数 (単数か複数)、 性 (男性か女性)かについては特定しない。
そのような区別についてはオプションで加えられる。
“ti”、“ta”と“tu” は、話し手が指し示すものに対して使われるものであり、原則として指し示すことのできないものには使われない。
名前 はスムティとして使われるが、語の前に “ la ”を付与する。
la meris. メリーという名前のもの
la djan. ジャンという名前のもの
ロジバンの名前には、そのつづり方や使える文字に制約がある。
以下の語はこの章でセルブリとして使われる語である。
vecnu x1(売る者)はx2(品)をx3(買う者)にx4(価格)で売る
tavla x1(話者)はx2(聞く者)にx3(題目)についてx4(言語)で話す/語る
sutra x1(行為者はx2(動作)に関して速い/すばやい
blari'o x1(対象・色)は青緑色
melbi x1(対象・概念はx2(審美者)にとってx3(審美基準)において美しい/綺麗だ
cutci x1はx2(足)のためのx3(素材)の靴/ブーツ
bajra x1はx2(表面)をx3(肢)を用いてx4(調子)で走る
klama x1はx2(終点)にx3(起点)からx4(経路)をx5(方法)で行く/来る
pluka x1はx2(経験者)にとってx3(条件)のもと快い/心地良い
gerku x1はx2(種類)のイヌ
kurji x1はx2を世話する/面倒みる
kanro x1はx2(基準)において健康/すこやか
stali x1はx2に留まる
zarci x1はx2(製品)を商うx3(営者)の店/市場
セルブリは、各スムティがその場所に応じてどのような役割を持つかを規定する。
上表においては、スムティの場所は、x1, x2, x3, x4, と x5として表わされている。
ロジバンでは、話者や書き手が必要だと思う場合には(特定の方法によって)新しく語を作ることができる。
簡単なブリディ。ギスム “ tavla ” の場所構造(PS)は以下の通り。
5.1) x1はx2にx3についてx4(言語)で話す/語る
“x”の後の数字は、ギスムの持つ諸項(場所)を表わしている。
5.2) ジョンは サムに ロジバンで 工学について 話す。
<ジョンは>は x1 の場所に, <サムに>は x2 の場所、 <工芸について>は x3 の場所、そして <ロジバンで>は x4 の場所に該当する。
5.3) <話す>、 ⇒ tavla
話し手<ジョンは> ⇒x1
聞き手<サムに> ⇒x2
話題<工学について> ⇒x3
言語<ロジバンで > ⇒x4
このブリディは例文5.2)の形に対応している。つまり、以下の形式である。
5.4) x1 [cu] tavla x2 x3 x4
単語 “ cu” は、前のスムティと後ろのセルブリを分ける働きをする。しばしば省略される。
5.5) mi tavla do zo'e zo'e
私はあなたにあることについてある言語で話す。
5.6) do tavla mi ta zo'e
あなたは私にそのことについてある言語で話す。
5.7) mi tavla zo'e tu ti
私はある人にあのことについてこの言語で話す。
シマヴォ“ zo'e ”は省略することもできる。
例文5.5)と5.6)は以下のように表わすことができる。
5.8) mi tavla do
私はあなたに話す。(あることについてある言語で)
5.9) do tavla mi ta
あなたは私にあのことについて話す。(ある言語で)
例文5.7)のように“ zo'e ” がブリディの最後にない場合は省略できない。
例文を見てみよう。
6.1) mi [cu] vecnu ti ta zo'e
売り手x1 売る 売る物x2 買い手x3 価格x4
私は 売る これを その人に ある価格で
I sell this-thing/these-things to that-buyer/those-buyers.
私はこれ(ら)をその買い手(ら)に売る。 (価格は重要でない)
例文6.1)では、セルブリの前にスムティ (x1)はひとつしかない。
セルブリの前に複数のスムティを置くこともできる。その場合には、スムティの並びを替えてはいけない。
6.2) mi ti [cu] vecnu ta
売り手x1 売る物x2 売る 買い手x3
私は これを 売る あの人に
6.3) mi ti ta [cu] vecnu
売り手x1 売る物x2 売り手x3 売る
私は これを あの人に 売る
(訳者注 これはまさに日本語の同じ順序である)
通例、セルブリの前にひとつ以上のスムティが出るのはひとつのスタイルか、あるいは強調のためである。(英語以外の言語の話者はそのような順番を好むかもしれない)
セルブリの前にスムティがない場合は、 x1の値が “ zo'e ”であると考えることができる。
それが重要でないとか、言う必要がないほど明白な場合など。
セルブリの後のスムティはかならずx2から始めなくてはならない。
6.4) ta [cu] melbi
対象・思考x1 美しい(誰かにとって、ある基準で)
それ(それら) 美しい
それは美しい。 それらは美しい。
x1が省略された場合は以下のようになる。
6.5) ________ [cu] melbi
不特定のx1 美しい(誰かにとって、ある基準で)
美しい! それは美しい!
x1を省略するのはセルブリを強調するためで、 観察文 <observative>という。
ロジバンのすべてのセルブリは、観察文として使うことができる。
“ cu ”は観察文には必要ないし、使ってはいけない。
“ cu” のように、文法的役割を持つ短い語を シマヴォ < cmavo>と言う。
スムティの順序を変更して、あるスムティをブリディの前に出したい時、セルブリの前にシマヴォ “ se ”を置くと、1番目と2番目のスムティを入れ替えることができる。
7.1) mi tavla do ti
私はあなたにこのことについて話す。
上文は下文のように変えることができる。
7.2) do se tavla mi ti
あなたは私よってこのことについて話される。
“ te ”は、同様に1番目と3番目のスムティの意味を入れ替える。
7.3) mi tavla do ti
私はあなたにこれついて話す。
上文と下文は同じ意味である。
7.4) ti te tavla do mi
これはあなたに私よって話される。
1番目と3番目のスムティは入れ替わっているが、2番目はそのままであることに注意。
“ ve ” と “ xe ”は、それぞれ1番目と4番目、1番目と5番目のスムティの意味を入れ替える。
このような順序の変換を 転換 <conversion>と言う。
同時に複数使用することができる。その場合は、左から右への順番で当てはめていく。
実際は、一度に1つしか使われない。というのは、スムティの場所の操作に関してはもっと便利な方法があるからだ。5章で詳説する。
これは、英語では 受動態 <passive voice>に相当する。
転換されたセルブリは新しいPSを持つ。転換されたセルブリは、後述の<描写スムティ>で見るように“ le selbri [ku] ”の形でも使われる。
文章は、シマヴォの“ ni'o ” か “. i ”によって区分される。それらは、英語における短い休止か、ピリオド、疑問符、感嘆符などのような区切り記号に相当する。.
それらは、次の文のスムティが前の文のスムティとつなげて解釈されないようにする。
“ ni'o ” は、段落を区切る働きをする。長い文章においては、 “ ni'oni'oni'o ”は、章を示し、 “ ni'oni'o ” は、節を示し、“ ni'o ”は段落を示す。
“ .i ”は、文書を区切る働きをする。しばしば別の単語と結合して、文脈における文章の正確な意味を示す。
後述の“ xu ”がある場合には文章は疑問文となる。
複数の話者が話す場合に、新しい話者が同じ話題を続ける場合でも通例、“ .i ”を省略する。
新しい話者は発話を“ .i ”から始めてもかまわないし、その方が文意は明確になる。
二つのギスムがつながったときに、最初のものが次のものを修飾する。セルブリは、一番右にある語の場所構造<PS>をとる。
このような結合されたギスムを タンル <tanru>と呼んでいる。
9.1) sutra tavla
このタンルのPSは以下のようになる。
9.2) x1(者)はx2(者)にx3(題目)についてx4(言語)で速く話す/語る人である
x1(者)はx2(者)にx3(題目)についてx4(言語)で速く話す/語る
3つ以上のギスムがある場合は、最初のものが2番目を修飾し、その複合した意味が3番目を修飾する。さらに、それらが複合した意味が4番目を修飾する。以下同様。
9.3) sutra tavla cutci
このタンルのPSは以下のようになる。
9.4) s1はs2が履いている素材s3の速く話すタイプの靴
これは<話し手の、速い靴>ではなく、<速く話す人のタイプの靴>という意味である。
9.5) bajra cutci
たいていの人は、これを<ランナーに適した靴>と理解するだろうが、<(自分自身で)走る靴>と考えることも可能ではある。
タンルの意味は、含意や比喩ではなく、文脈によって決定される。
9.6) sutra tavla 速く話す(人)
このタンルは英語のイデオムのような<口のうまい人・詐欺師>というような含意はない。
9.7) jikca toldi 社交的な蝶
これも蝶の意味で、英語のイデオムの <社交好きな人>の含意はない。
タンルのPSは、つねにそのタンルの最後の構成要素のものとなる。
次の例では“ klama ”“のPSとなる。
9.8) mi [cu] sutra klama la meris.
私はメアリのところへ急いで行く。
次の例では、転換された“ se klama ”がタンルの最終部分であり、そのPSは、x1<目的地>、x2<行く人>である。
9.9) mi [cu] s utra se klama la meris.
私はメアリによって急いで行かれる。(メアリは急いで私のところへ来る)
次の例文では、“ tavla” のPSであるが, 2種類の解釈が可能である。
9.10) la tam. [cu] melbi tavla la meris.
トムはメアリに美しく話す。
トムはメアリへの美しい話し手である。
転換されたのが次の例文。
9.11) la meris. [cu] melbi se tavla la tam.
メアリはトムによって美しく話される。
メアリはトムの美しい聞き手だ。
メアリの役割に焦点を当てると、修飾関係が変わり、2種類の違った解釈が可能となる。
転換を使ったときでも、次の場合は、前のような大幅な変化が見られない。
9.12) la tam. [cu] tavla melbi la meris.
トムはメアリにとって話し手として美しい。
9.13) la tam. [cu] se tavla melbi la meris.
トムはメアリにとって聞き手として美しい。
2例ともトムは美しさの対象であり、メアリは観察者である。
“ le tavla ku ”は、 話し手という意味になる。
これは、 描写スムティ <description sumti>と呼ばれるものである。
10.1) mi tavla do le tavla ku
10.2) 私はあなたに話し手について話す。
#訳が適切か?
同様に、“ le sutra tavla ku ” は、<速い話し手>であり、“ le sutra te
tavla ku ”は、<話される速い話題>もしくは、<速く話される話題> である。どちらの意味になるかは文脈による。
多くの場合、 “ ku ” は省略される。とりわけ、文末では必要ない。
10.3) mi tavla do le tavla
は、例文 10.1)と同じである。
<速い者は話している>と言いたいときに、< le sutra tavla >と言うと、<速い話し手>となってしまうので、 “ cu ”を用いて、< le sutra cu tavla > とする。
“ cu ” は、意味を持たない。前のスムティを分離して、セルブリの始まりの箇所を示す。
10.4) le sutra tavla 速い話し手
10.5) le sutra cu tavla 速い者は話す。
10.6) le sutra se tavla 速い話され手(聞き手)
10.7) le sutra cu se tavla 速い者は話されている(聞いている)
もっと複雑な例文を見てみよう。
10.8) mi [cu] tavla le vecnu [ku] le blari'o [ku]
私は売り手に青緑色のものについて話す。
“ le vecnu ”は、“ vecnu ”のPSのx1の意味に従って、<売り手>という意味を持つ。
聞き手が心に描く(だろうと話し手が想定している)特定の売り手を意味する。
同様に、“ le blari'o ”では、話し手は特定の青緑色のものを心に描いている。
例文では、“ ku ” も “ cu ”も省略することができる。
それ自身でセルブリの関係を表わす語を ブリヴラ < brivla >と言う。
それには、3つのタイプがある。 ギスム < gismu > (根語)と、 ルジヴォ < lujvo > (複合語)と、 フヒヴラ < fu'ivla > (他の言語からの借用語)である。
ギスム
11.1) mi [cu] klama ti zo'e zo'e ta
私は(あるところから、あるルートで、ある手段で)ここへ来る。
ルジヴォ
11.2) ta [cu] blari'o
これは青緑色だ。
フヒヴラ
11.3) ti [cu] djarspageti
これはスパゲティである。
いくつかのシマヴォもセルブリとして働くことがある。
もっとも普通に使われるのに“go'i”がある。これは、前文の主要ブリディを代理するものである。
11.4) ta [cu] go'i
それは、前のブ前の文と同じである。
誰かが<その犬は美しい>と言ったときに、<これは嬉しい>」と応えたとする。
この <これ>は、ロジバンではどういうふうに表現するか?
12.1) le gerku [ku] cu melbi
その犬は美しい。
ロジバンでは、次の3つの文が<これは嬉しい>の訳になりうる。
12.2) ti [cu] pluka mi
これ(その犬)は私を喜ばせる。
12.3) di'u [cu] pluka mi
これ(その文章)は私を喜ばせる。
(その文章が文法的であるとか、その音の響きがいいので)
12.4) la'e di'u [cu] pluka mi
これ(その文章の意味)は私を喜ばせる。
つまり、その犬が美しいという内容が私を喜ばせる。
例文12.4)では、他の内容を示すときに1つのスムティが使われている。
通常は、“ la'edi'u ”のように1つの語のように表記され、 “ di'u ”単体でよりも多く使用される。
13 所有
所有 <Possession>についての詳説は” 8章にある。
もっとも簡単な方法は、記述スムティを利用する方法である。
13.1)
le mi gerku cu
sutra
私の犬は速い。
ロジバンでは、所有はかならずしも法的所有を意味しない。
ただ座っているだけで椅子を<所有>することができる。
英語でも同様の時もあるが、法的な所有や密接な関係で使われている。
たとえば、<私の腕>は、<私の体の一部である腕>である。
ロジバンでは、それらを厳密に分けて記述することができる。
14 呼びかけと命令
ある人を呼ぶときには、“ doi ” の後ろに名前をつけて、その人を呼ぶ。
14.1) doi djan.
<やあ、ジョン、ちょっと話があるんで>というような意味である。
ほかのシマヴォを“ doi ” の代わりに呼びかけとして使うことができる。
“ coi ” は、<やあ、こんにちは> であり、 “ co'o ”は、<バイ、さようなら>の意味である。
いずれも、単独で使うか、その後に名前や休止を伴う。
“ doi ” では、名前の前に休止は必要ない。
14.2)
coi. djan.
やあ、ジョン。
14.3)
co'o. djan
.
さようなら、ジョン。
命令文は以下のように作る。
14.4)
do tavla
あなたは話している。
“ do ”を.“ ko ”に変えるだけで命令文になる。
14.5) ko tavla
これで、<話せ・話なさい>の意味になる。
:
14.6)
ko sutra
急げ。
“ ko ”は、かならずしも x1の場所でなくてもよい。
14.7)
mi tavla ko
私に話させてください。
“ ko ”はスムティのどの場所にでも置くことができる。
14.8) ko kurji ko
14.9) ko ko kurji
両者は同じく、<あなたはあなたに気をつかって下さい><気をつけて>というような意味になる。
15 疑問
ロジバンにはたくさんの疑問の形がある。19章で詳説する。
ここではスムティ疑問、セルブリ疑問、そして肯定・否定疑問の3つを扱う。
シマヴォの“ ma ”は、スムティ疑問の時に使われる。
これは、その置かれた位置において何を尋ねるかが変わってくる。
<誰?>だったり <何?>だったりすることが多いが、<何時?> や<何処?>“や<何故?>のときもある。
15.1) ma tavla do mi
誰があなたに私のことを話していますか?
15.2) la djan.
ジャン(があなたに私のことを話している。
“ ko ”と同じように、 “ ma ” が置かれるのは、1番目の場所とは限らない。
15.3) do [cu] tavla ma
あなたは、誰に(何に)話していますか?
“ ma ”が置かれるのは、一箇所だけとは限らない。
15.4) ma [cu] tavla ma
誰が(何が)誰に(何に)話していますか?
2つの“ ma ”は、2つの別の質問を表している。
シマヴォの “ mo” は、 “ ma ”のセルブリ版である。
15.5) do [cu] mo
あなたは、何ですか(何をしていますか)
“ mo ”は、ブリヴラやほかのセルブリのどこにでも置ける。
“ mo ”は、非常にあいまいな疑問である。
15.5)の質問に対する応え方は いろいろと考えられる。
15.6)
mi [cu] melbi
私は美しい。
15.7)
mi [cu] tavla
私は話しています。
“ mo ”は、正しい回答を得るには話者と応対者の間に協調関係が必要である。
文脈がはっきりしないときには、もっと詳しく尋ねる必要がある。
最後に、肯定否定疑問を見ておこう。.
15.8) あなたは私に話していますか?
英語と同じように、15.8)は次のように言い換えることができる。
15.9) あなたが私に話しているというのは、本当ですか?
シマヴォ“ xu ”は、ブリディの前に置かれるときに、そのブリディが真かどうかを尋ねる。
15.10)
xu do tavla mi
I これは本当か?あなたが私に話していることは。
<はい>に対する答え方は、ただ“ xu ”を除いた文を繰り返せばいい。
前に見たように 、ただ“ go'i ”と言えばいい。
15.11)
xu do kanro
あなたは健康ですか?
回答は、
15.12)
mi kanro
私は健康です。
あるいは、
15.13)
go'i
私は健康です。(同上)
(質問の“do”が回答では “mi”に変わっていることに注意)
あるいは、
15.14)
le tavla cu kanro
話者は健康です。
あるいは、
15.15)
le tavla cu go'i
話者は健康です。
否定的な回答は、 “ na go'i ”である。
“ na ”は、すべてのセルブリの前に置くことができる (ただし、“ cu ”は別)
それは、<これは本当でない>に相応する。
これは特定のブリディが真か偽かを尋ねているだけである。
16 指示詞
どの文化にも感情や態度を示すイントネーションやジェスチャーがあるが、それらは通常書く文章には含まれない。
ロジバンでは、これらも 心態指示詞 “attitudinal indicators”がカバーしている。
これらは話し言葉でも書き言葉でも使われ、特別なイントネーションやジェスチャーを必要としない。
ブリディの前に置かれた、ひとつ以上の心態指示詞は、そのブリディ全体にかかる。
それ以外の場所では、置かれているすぐ左の単語にかかる。
16.1)
.ie mi [cu] klama
いいよ、僕が行くよ。
16.2)
.ei mi [cu] klama
I should go. 私が行かねばなりません。 16.3) mi [cu] klama le melbi .ui [ku]
私はきれいなところに行く。嬉しい。
すべての心態指示詞が態度を表すわけではない。
論述系 ”Discursive” は、文法的な規則を表している。論述系を使うことによってメタ言語的な要素を加えることができる。
.
16.4) mi [cu] klama .i do [cu] stali
私は行く。あなたはとどまる。
16.5)
mi [cu] klama .i ji'a do [cu] stali
私は行く。さらに、あなたはとどまる。(過重)
16.6)
mi [cu] klama .i ku'i do [cu] stal
私は行く。しかし、あなたはとどまる。(対照)
別の指示詞としては、 明察系 “evidential” がある。
明察系は、話者と発言の関連について示す。
“ za'a ” は、<私は直接的にその関連を観察した)
“ pe'i ”は、<私はその関連があると信じる>
“ ru'a ”は、<私はその関連を仮定する> (I postulate the relationship),など。
アメリカの先住民の言葉にはこれが多くある。
16.7)
pe'i do [cu] melbi
私は思う。あなたは美しい。
16.8)
za'a do [cu] melbi
私は直接観察した。あなたは美しい。
17 時制
英語では、動詞に過去、現在、未来という時制が必要である。
過去のことは、、
17.1) ジョンは店に行った。
未来のことは、
17.2)ジョンは学校に行くだろう。
ロジバンでは、
17.3) la djan. [cu] klama le zarci
ジョンは店に 行く(行った、行くだろう)
というように、、例文17.1)17.2)のいずれにも当てはまる。
ロジバンでは、必ずしも時制を示す必要がないが、示すこともできる。
17.4) la djan. pu klama le zarci
ジョンは(過去)店に行く。
“ pu ”というタグによって、文章は過去を表すものとなる。
17.5) la djan. ca klama le zarci
ジョンは(現在)店に行く。
“ ca ”というタグによって、文章は現在を表すものとなる。
タグはこのようにいつもセルブリの最初につけられる。
タグは、英語の時制や副詞と同じような働きをする。これを相制と呼ぶ。
ロジバンにおける相制は強制的なものではなく、オプションである。
ロジバンでは、相制は時間だけではなく空間にも拡張されている。
タグ“ vu ”を使った次の文は、話者から離れたところでの出来事である。
17.6) do vu vecnu zo'e
あなたは、向こうであるものを売る。
さらに、相制タグ(時間でも空間でも)は、セルブリに付属して、相制化されたスムティを作ることができる。
17.7) le pu bajra [ku] cu tavla
先の(前の・過去の)ランナーは話す。
(ロジバンの時制はオプションであるので、いつ話したかはわからない)
空間を表すタグがついがギスムは、英語の “this” や “that”に対応する。
17.8)
le vi bajra [ku] cu tavla
このランナーは話す。
この“ vi ”とシマヴォの “ ti ”と区別する必要がある。
前者は<近く>という意味のタグであり、後者は<このもの>という意味である。
相制タグは、セルブリとスムティに同時に使われることもある。
以下の例では、 “ ba ” が相制を表している。
17.9)
le vi tavla [ku] cu ba klama
このランナーは行くだろう。
18、ロジバンの文法用語
以下のものがここで使われるロジバンの文法用語である。
ブリディ <bridi>
命題。ロジバンの表現の基本的な単位。文の基本。ある複数の対象がある関係にあるという定言。あるいは、ある単一の対象がある性質を持つという定言。
スムティ <sumt>
名辞。別のものに対して特定の関係にあることを表す語。あるいは、特定の性質を持つ語。
セルブリ <selbri>
論理的な命題。ブリディの核となるもので、スムティによって表された対象間の関係を特定する語。
シマヴォ <cmavo>
ロジバンの品詞のひとつ。短い語。構造的な語。文法的な機能を示す語。
ブリヴラ <brivla>
ロジバンの品詞のひとつ。内容語。命題語。セルブリとして機能する。ギスム、ルジヴォとフヒヴラのこと。
ギスム <gismu>
根語。ブリヴラの一種。ラフシを持つ。
ルジヴォ <lujvo>
複合語。ブリブラの一種。辞書に載っていないものもある。ラフシを持たない。
フヒヴラ <fu'ivla>
借用語。ブリブラの一種。辞書に載っていないこともある。非ロジバン語から借用され、ロジバン化された語。一般的には、文化や自然界に関する語。ラフシを持たない。
ラフシ <rafsi>
断片語。ギスムと関連している。あるルールに基づいて結合してルジヴォを作る。単体としては意味を持たない。形態素。
タンル <tanru>
2つ以上のブリブラのグループ。シマヴォを伴うこともある。セルブリを作る。2つの部分に分けることができ、最初の部分が後の部分(基本部分)を修飾する。
セルマホ <selma'o>
同一の文法的用法を持つシマヴォのグループ(文法上は文において交換することができるもの)に属するが、意味や用法が異なるもの。