[Cartoon]

CLL 第6章 いろんな話をしよう:ロジバンのスムティ

1. 5種類の単純なスムティ(sumti:項)

1)
描写型の冠詞 (descriptor) で始まる描写 (descriptions) (例:le zarci)
2)
代スムティ(例:mi)
3)
名前 (例:la lojban.)
4)
引用
5)

2. 3つの基本的な描写スムティ

 
     le      LE                  そう記述されたもの
     lo      LE                  実際そうであるもの
     la      LA                  そう名付けられたもの
     ku      KU                  LE 類・ LA 類の末端

le

 
2.3)   le nanmu cu ninmu
       その男は女だ。
le nanmu は、話者が心に描いている1人以上の特定の男を表す。 nanmu に le を冠することによって、話者が心に描いているものを nanmu の x1 として記述しただけで、実際に nanmu の x1 (男)であるかどうかということには関与しない。したがって、例 2.3 は矛盾しない。

lo

 
2.5)   lo nanmu cu ninmu
       (不特定の)男は女だ。
lo nanmu は、1人以上の男を表すが、どの男であるか特定されていない。 lo nanmu は、実際に nanmu の x1 (男)であるものを指す。したがって、例 2.5 は、現実には正しくない。

la [セルブリ]

セルブリ (selbri) の本来の意味を離れ、そういう名前のものとして表される。
 
2.6)   la cribe pu finti le lisri
       熊さんがその物語を創った。
「熊」は作者の名前。正しい記述となりうる。

 
2.8)   le cribe pu finti le lisri
       その熊がその物語を創った。
話者がそういう熊を心に描いているなら、正しい記述となりうる。

 
2.9)   lo cribe pu finti le lisri
       熊がその物語を創った。
その物語の作者は実際の熊ではありえないので、正しくない。
「実際の熊」はパンダでもぬいぐるみでも良い。
gismu はできるだけ広い意味で定義されている。
「実際の熊」と言えるかどうか分からないものには lo よりも le の方が通じやすい。

ku

描写の末端に付くが、以下の場合を除き、省略できる。

3. 個と群れ

スムティの指すものは「個」「群れ」「集合」の3種類に分類される。
 
     lei     LE                  そう記述された群れ
     loi     LE                  実際そうである群れの一部分
     lai     LA                  そう名付けられた群れ

lei

 
3.1)   le prenu cu bevri le pipno
       その人(たち)が鍵盤楽器を運ぶ。
複数の人であっても、同時にであれ、順番にであれ、各人がその鍵盤楽器を運ぶことを表す。
 
3.2)   lei prenu cu bevri le pipno
       その人たちが(集団で)鍵盤楽器を運ぶ。

loi

 
3.3)   loi cinfo cu xabju le fi'ortu'a
       ライオンがアフリカに住む。
アフリカに住むライオンの群れの大きさには言及していない。
アフリカ以外のところに住むライオンがいても正しい文。

 
3.5)   loi matne cu ranti
       バターが軟らかい。
硬いバターがあっても正しい文。
# 「lo matne cu ranti」 と言うこともできる。xorlo 案では、冠詞の選択に迷う場合は lo を使うことになっている。 xorlo 案に従う各冠詞の新しい定義が提案されている。

ロジバンで「群れ」を形成しても、群れの構成要素が「互いに空間的に傍にある」といった何らかの関係にあるという意味にはならない。

lai

 
3.6)   lai cribe pu finti le vi cukta
       熊さんたちが(集団で)この本を創った。
lai の代わりに la とすると、「熊さん」が複数いても、各々がこの本を創ったという意味になる。

4. 群れと集合

 
     le'i    LE                  そう記述された集合 # そう記述されたものの集合?
     lo'i    LE                  実際そうであるものの集合
     la'i    LA                  そう名付けられたものの集合
集合の性質はその要素の性質と関係ない。 集合には濃度(何個の要素が属しているか)・帰属関係(集合と要素の関係)・包含関係(2つの集合間の関係、集合はその部分集合の全ての要素を自分の要素として持つ)などの性質がある。 群れの一部分を指す lei, loi, lai と違って、le'i, lo'i, la'i は1つの集合全体を指す。
 
4.1)   lo ratcu cu bunre
       鼠が茶色い。
 
4.2)   loi ratcu cu cmalu
       鼠の群れが小さい。
 
4.3)   lo'i ratcu cu barda
       鼠の集合が大きい。=鼠はたくさんいる。
例 4.2) は、少なくとも1匹の鼠は小さいので、正しい。ただし、「鼠の群れが大きい」と言っても正しい。
「鼠の群れが茶色い」と言っても正しい。
「鼠の集合が茶色い」は正しくない:茶色という性質は集合の性質ではない。

スムティとして集合を取るセルブリがある。
例:fadni
x1はx2(性質)・x3(集合)において平凡/通常/普通

5. 典型的なものの冠詞

 
     lo'e    LE                  典型的なもの
     le'e    LE                  ステレオタイプなもの
 
5.1)   lo'e cinfo cu xabju le fi'ortu'a
       典型的なライオンがアフリカに住んでいる。
典型的なライオン: ライオンの集合「lo'i cinfo」の要素として最良の例となる架空のライオン抽象が「lo'e cinfo」

 
5.3)   le'e xelso merko cu gusta ponse
       ギリシャ系アメリカ人は大抵レストランを経営している。
「le'e xelso merko」は、実際のギリシャ系アメリカ人の集合とは関係なく、話者の思い描くギリシャ系アメリカ人の集合の典型を指す。

「名付けられたもの」 la に対応する典型を表す冠詞は無い。

6. 量化されたスムティ

 
     ro      PA                  全ての・各
     su'o    PA                  少なくとも(1つの)
 
6.1)   do cadzu le bisli
       あなた(がた)が氷の上を歩く。
 
6.2)   re do cadzu le bisli
       あなたがたのうちの2人が氷の上を歩く。
例 6.2) では、氷上を歩く2人の他に聞き手がいれば、その人たちは氷の上を歩いていないという意味を含んでいる。数が示されているときは、その数は正確でなければならない。
 
6.3)   mi ponse su'o ci cutci
       私は少なくとも3個の靴を持っている。 
       # 3足ではない。
3個以上なら何個持っていても正しい。

 
6.4)   ro do cadzu le bisli
       あなた(がた)全員が氷の上を歩く。
例 6.1例 6.4 はまったく同じ意味。
数量詞が明示されていないときでも、「暗黙の数量詞 (implicit quantifier)」がある。
全ての人称代スムティについて、暗黙の数量詞は「ro (全ての)」

引用スムティの暗黙の数量詞は「su'o (少なくとも1つの)」
もし「ro」だと、
 
6.6)   mi cusku ro lu do cadzu le bisli li'u
「あなたが氷の上を歩く」という文の発言は全部あなたが言ったという意味になるが、実際にはいくつかの発言をしただけなので、正しくない。
li'u で始まるスムティの暗黙の数量詞は su'o とするのが妥当。数量詞を明示すると
 
6.7)   mi cusku su'o lu do cadzu le bisli li'u
       私は少なくとも1回「あなたが氷の上を歩く」と言う。
ということになる。
su'o の代わりに 数値を入れると、発言の正確な回数が伝わる:
 
6.8)   mi cusku re lu do cadzu le bisli li'u
       私は2回「あなたが氷の上を歩く」と言う。

7. 量化された描写

 
     piro    PA                  全体
     pisu'o  PA                  一部分
pi は小数点を表す。 piro で「一つのもの全体」、 pisu'o で「一つのものの少なくとも一つの部分」を表す。
「外部数量詞 (outer quantifier)」:スムティの前に付く数量詞。スムティの指すもの全てのうちの何個であるかを示す:
 
7.1)   re le gerku cu blabi
       その犬たちのうち2匹は白い。
「内部数量詞 (inner quantifier)」:冠詞とセルブリの間に付く数量詞。
そのセルブリで特徴づけられるものが何個あるかを示す:
 
7.2)   re le ci gerku cu blabi
       3匹の犬のうち2匹は白い。
外部数量詞を明示しないで、内部数量詞だけ明示すると
 
7.3)   le ci gerku cu blabi
       その3匹の犬は白い。
外部数量詞や内部数量詞が明示されない場合のデフォルトの数量詞(暗黙の数量詞)が、冠詞ごとに決まっている:
# xorlo 案ではデフォルトの数量詞を廃している。例えば lo のデフォルトの外部数量詞は su'o とは限らない:1頭の熊も10億頭の熊も、熊観念(「熊は蜂蜜が好き」など)も、トラックに轢かれてつぶれた熊も lo cribe で表すことができる。)
le:
ro le su'o
少なくとも1つのそう記述されたものの全て
lo:
su'o lo ro
実際そうであるもの全てのうちの少なくとも1つ
la:
ro la su'o
少なくとも1つのそう名付けられたものの全て
lei:
pisu'o lei su'o
少なくとも1つのそう記述されたものの群れの一部分
loi:
pisu'o loi ro
実際にそうであるもの全ての群れの一部分
lai:
pisu'o lai su'o
少なくとも1つのそう名付けられたものの群れの一部分
le'i:
piro le'i su'o
少なくとも1つのそう記述されたものの集合全体
lo'i:
piro lo'i ro
実際にそうであるもの全ての集合全体
la'i:
piro la'i su'o
少なくとも1つのそう名付けられたものの集合全体
le'e:
ro le'e su'o
少なくとも1つのそう記述されたもののステレオタイプ全体
lo'e:
su'o lo'e ro
実際にそうであるもの全てのうちの少なくとも一つの典型的なもの
la 系列と le 系列の暗黙の数量詞は一致している。
lo 系列のデフォルトの内部数量詞は ro :話者の意向と関係なくセルブリの x1 に相当するもの全てを参照する。
le 系列のデフォルトの内部数量詞は su'o :話者の思い描くものだけを参照する。
群れと集合は元来単数なので、群れや集合の外部数量詞は、最大で piro となる。
(ただし、氷の分子の群れと液体の水分子の群れを異なるものとして思い描く場合は、 re lei djacu もありうる。)
# xorlo 案では、群れの外部数量詞は単純に群れの数を表す。
集合に piro より小さい数量詞を付けても良い。 「pimu le'i nanmu」は「le'i nanmu」の部分集合になる。
 
7.4)   [ro] le ci gerku cu blabi
       その3匹の犬は(3匹とも)白い。

7.5)   ci lo [ro] gerku cu blabi
       (全ての犬のうち)3匹の犬は白い。
例 7.4 の ci は話者が思い描いている犬の数を表す。
例 7.5 の ci は lo gerku が指す全ての犬から、個体数を3匹に制限する。どの犬であるかは指定しない。

lo の内部数量詞に数値を入れるのは危険:実際にその数だけ存在することを表してしまう。
le の内部数量詞に数値を入れる場合、その数が正しくなくても良い(話者の観点による数値だから)。
# xorlo 案ではデフォルトの数量詞を廃しているので、 lo の内部数量詞に数値を入れても良い。 lo の外部数量詞に数値を入れると個別性を表す:「mu lo bakni cu bevri lo pipno」 は「5頭の牛がそれぞれ個別にピアノを運ぶ」という意味になる。 lo の内部数量詞に数値を入れると、個別性が曖昧になる:「lo mu bakni cu bevri lo pipno」は5頭の牛がそれぞれ個別にピアノを運ぶのか、5頭が群れをなしてピアノを運ぶのか、意味が曖昧になる。群れであることを明らかにするには loi を使って「loi mu bakni cu bevri lo pipno」とする。 xorlo 案で、実際に牛が5頭だけしか存在しないことを表したいときは、「lo ro bakni ku noi mu mei」「mu bakni cu zasti .i lo ro bakni cu bevri lo pipno」のように言う。

8. 不定の描写 (Indefinite descriptions)

例 7.5 のように、外部数量詞が明示され、内部数量詞が明示されていない場合、lo は省略できるが、それ以外の冠詞は省略できない。
 
8.1)   ci gerku [ku] cu blabi
       3匹の犬は白い。
例 8.1例 7.5 と同じことを表す。 lo が省略されている場合でも 末端の ku を使って良い。 lo が省略された描写は「不定の描写 (Indefinite descriptions)」と呼ばれるが、 lo が明示されている場合と比べて何も不定ではない。

9.スムティに基づく描写

これまでの描写の中のセルブリの位置に、セルブリに替わってスムティが入った描写。 この場合、内部数量詞は省略できない。
 
9.1)   re do cu nanmu
       あなたがたのうち、2人は男だ。
 
9.2)   le re do cu nanmu
       あなた方2人は男だ。
例 9.2) の内部数量詞 re は do が指す人数を与える。
 
9.3)   re le ci cribe cu bunre
       その3頭の熊のうち2頭は茶色い。
 
9.4)   le re le ci cribe cu bunre
       その3頭の熊のうちその2頭は茶色い。
 
9.5)   pa le re le ci cribe cu bunre
       その3頭の熊のうちその2頭のうちの1頭は茶色い。

10.スムティの限定詞 (qualifiers)

スムティの限定詞:スムティの前に付いて別のスムティにする。
# 長くなる描写を短くする働きがある。
 
     la'e    LAhE                ~の指示対象
     lu'e    LAhE                ~の記号
     tu'a    LAhE                抽出 # ~をなんとかすること
     lu'a    LAhE                ~の個・要素・成分
     lu'i    LAhE                ~の集合
     lu'o    LAhE                ~の群れ
     vu'i    LAhE                ~の序列
 
     na'ebo  NAhE+BO             ~ではないもの
     to'ebo  NAhE+BO             ~と反対のもの
     no'ebo  NAhE+BO             ~の中間のもの
     je'abo  NAhE+BO             まさに~であるもの
 
     lu'u    LUhU                限定詞終了。LAhE や NAhE+BO の係る範囲の末端に付く。省略できる。

la'e

 
10.1)  mi viska lu le xunre cmaxirma li'u
       私は「le xunre cmaxirma」という文を見る。

10.2)  mi viska le selsinxa be lu le xunre cmaxirma li'u
       私は [引用] le xunre cmaxirma [引用終了] という題名の本を見る。

10.3)  mi viska la'e lu le xunre cmaxirma li'u [lu'u]
       私は [引用] le xunre cmaxirma [引用終了] という題名の本を見る。
例 10.2)例 10.3) は同じ意味になる。

lu'e

 
10.4)  mi pu cusku lu'e le vi cukta
       私はこの本の題名を言った。

10.5)  mi pu cusku le sinxa be le vi cukta
       私はこの本の題名を言った。
例 10.4)例 10.5) は同じ意味になる。

tu'a

 
10.6)  mi troci tu'a le vorme
       私はその扉を(開けようと)努める。

lu'a

 
10.7)  lo'i ratcu cu barda .iku'i lu'a ri cmalu
       鼠の集合は大きい。しかし、その(少なくとも一つの)要素(鼠個体)は小さい。

lu'i

10.8)  lo ratcu cu cmalu .iku'i lu'i ri barda
       (少なくとも1匹の)鼠は小さい。しかし、その集合は大きい。

lu'o と vu'i

 
10.9)  mi ce do girzu
           .i lu'o ri gunma
           .i vu'i ri porsi
       私とあなたの集合は集合である。
           その群れは群れである。
           その列は列である。

na'ebo

 
10.10) mi viska na'ebo le gerku
       私は犬ではないものを見る。

to'ebo と no'ebo

 
10.11) mi nelci loi glare cidja
              .ije do nelci to'ebo ri
              .ije la djein. nelci no'ebo ra
       私は熱い食べ物が好きだ。
              そして、あなたは冷たい食べ物が好きだ。
              そして、ジェーンは生ぬるい食べ物が好きだ。
# cidja に対する to'e や no'e は考えにくい。ここでは glare に対する to'e や no'e を考えているようだが、タンル (tanru) の意味はテルタウ(tertau タンルの中の被修飾部分、デフォルトの順序では最後にくる単語)が中心になるので、 loi glare cidja に to'ebo や no'ebo を付けるのは奇妙である。むしろ loi cidja glare 「食物的な熱いもの」に to'ebo や no'ebo を付けるべきではないか?

11. 呼びかけ文の統語

呼びかけ文は、スムティではないが、統語がスムティに似ている。 「自由限定詞 (free modifiers)」と呼ばれる(第19章)。 省略できる末端境界詞の後(呼びかけ文を入れる場合は省略しない)・文の冒頭や末尾などに置かれる。 話し相手・聞いてほしい相手を示すために使われる。

聞き手が誰であるか明らかな場合:

 
11.1)  coi
       こんにちは。
 
11.2)  je'e
       なるほど。了解。

聞き手を指し示す場合:

 
11.3)  coi. djan.
       こんにちは、ジョン。
COI 類と名前の間には休止「.」を入れる。
休止の代わりに doi を入れても良い。
 
11.4)  coi doi djan.
       こんにちは、ジョン。

doi そのものは、聞き手が話者に注意を向けるようにするために使われる:
 
11.5)  doi djan.
       ジョン!

名前の代わりに、冠詞 le の省かれた描写を置いても良い:
 
11.6)  coi xunre pastu nixli
       こんにちは、赤いドレスの女。
聞き手が自分のことだと分かっていれば、実際に赤いドレスを着ていなくても良い。
この形の呼びかけ文では、数量詞も付けてはいけない。暗黙の数量詞「su'o le ro」が有効である。
省略の無いスムティも呼びかけ文に使える:
 
11.7)  co'o la bab. .e la noras.
       さようなら、ボブとノラ。

11.8)  coi le xunre pastu nixli
       こんにちは、赤いドレスの女。

11.9)  doi la djan.
       ジョン!
例 11.8)例 11.6) と同じ意味になる。
例 11.9)例 11.5) と同じ意味になる。

呼びかけ文の末端境界詞 do'u は以下の場合にのみ必要になる: 呼びかけ文の意味は、文中の位置には左右されない。

12. ロジバン名

第2節で扱った la [セルブリ] という形の名前のほかに、名前だけに使われるロジバン単語の種類(ロジバン名)がある。
 
12.1)  djan.      meris.      djein.       .alis.
       ジョン     メアリ       ジェーン       アリス
ロジバン名の使い方:
 
12.2)  la djonz. klama le zarci
       ジョーンズがその店に行く。
 
12.3)  lai djonz. klama le zarci
       ジョーンズ家がその店に行く。
呼びかけに使われるロジバン名と違って、 スムティとして使われるロジバン名は、指される本人がその名を使っていなくても良い。 例 12.2)例 12.3) の使い方は、それぞれ 例 2.6)例 3.6) の使い方と同じで、セルブリの代わりにロジバン名が入っただけある。
LA 類と LE 類の違いは、LA 類の後にロジバン名が来ても良いのに対し、 LE 類の後にはロジバン名が来ないことだけである。

ロジバン名の形には制限がある:
ほかの単語に関する規則で制限されない限り、ロジバン名を複数つなげても良い。この場合、各ロジバン名の最後に休止「.」を付ける:
 
12.6)  doi djan. pol. djonz. le bloti cu klama fi la niuport. niuz.
       ジョン・ポール・ジョーンズ、ニューポート・ニューズから船が来たよ。

他言語から発音を借用する代わりに、ラフシ (rafsi) を組み合わせて子音で終わるように並べても、ロジバン名を形成できる。
 
12.7)  lojban.
       loj- (logji)  ban- (bangu)
       ロジバン

他言語では母音で終わる名前や、ロジバンのブリヴラをロジバン名にするときは、母音を取り除くか、任意の子音を付け足す。

13. 代スムティまとめ

代スムティ:KOhA 類の機能語。第7章で詳しく説明されるが、本節では各 代スムティの暗黙の数量詞について例示する。

以下では特にことわらないかぎり、 代スムティの暗黙の数量詞は ro である。
代スムティが他のスムティ(A) を指す場合、 ro は「 (A) が指すもの全て」という意味である。したがって、 (A) の量化を制限することは可能だが、拡張することはできない。

人称代スムティ

mi, do, mi'o, mi'a, ma'a, do'o, ko
 
13.1)  mi prami do
       私があなたを愛する。
人称代スムティは文脈によって個または群れとして解釈される。 したがって、暗黙の数量詞は ro ではなく pisu'o である。
特に、 mi'o (あなたと私), mi'a (私と他者), ma'a (あなたと私と他者), do'o (あなたと他者) は個体を組み合わせた群れを表す。

定義可能な代スムティ

ko'a, ko'e, ko'i, ko'o, ko'u, fo'a, fo'e, fo'i, fo'o, fo'u
goi とともに使われて、指示対象を定義する。
 
13.2)  le cribe goi ko'a cu xekri .i ko'a citka le smacu
       その熊 (1) は黒い。(1) は鼠を食べる。
そのほか、文字を表す単語 BY 類なども、定義可能な代スムティとして使って良い。

量化型代スムティ

da, de, di
命題の中で、述語論理で言う変数として使われる。
 
13.3)  ro da poi prenu cu prami pa de poi finpe
       人であるもの全てが(それぞれ)、魚であるもの一つを愛する。
「全ての人がある一つの魚を愛する」とは違う意味になる。
量化型代スムティの暗黙の量化規則は特殊であり、第16章で詳述されるが、おおざっばに言うと、量化型代スムティが最初に使われると su'o 、それ以外の場合は ro になる。

再帰代スムティ

vo'a (x1), vo'e (x2), vo'i (x3), vo'o (x4), vo'u (x5)
同じ bridi の PS で、他の位置に配置されたスムティと同じものを指す:
 
13.4)  le cribe cu batci vo'a
       その熊が熊自身を噛む。

逆算代スムティ

ri (いましがたのスムティ), ra (先ほどのスムティ), ru (ずっと前のスムティ)
この代スムティから後ろ向きに数えて、以前のスムティが指すものを指す。
 
13.5)  mi klama la frankfurt. ri
       私はフランクフルトからフランクフルトへ(どこかを通って)行く。

不定代スムティ

zo'e (不特定スムティ), zu'i (PS 上のその位置の典型スムティ), zi'o (PS 上の特定の項を消去)
不特定のものを指す。
 
13.6)  mi klama la frankfurt. zo'e zo'e zo'e
       私はどこかからどこかを通って何らかの手段でフランクフルトへ行く。
不定代スムティの暗黙の数量詞は不定:ro (全)または su'o (少なくとも一つ)または no (無)
# zi'o は態 (voice) をセルブリの PS に反映させるのに使える:
#
# ra vecnu ti mi (彼はこれを私に売る:能動態)
# ti se vecnu ra mi (これは彼から私に売られる:受動態)
# zi'o ti vecnu zi'o zi'o (これは売れる/売っている:中間態)
#
# zi'o のラフシ zil を使ってルジヴォを作れる:
# ti zilve'u (これは売れる/売っている)
# 消去する項を明確にすることもできる:
# selzilve'u / relzilve'u

指示代スムティ

ti (これ), ta (それ), tu (あれ)
話者に指されるもの、あるいは話者から近/中/遠距離にあるもの
 
13.7)  ko muvgau ti ta tu
       これをそこからあちらへ動かしなさい。

メタ言語の代スムティ

di'u (いま言ったこと), de'u (さきほど言ったこと), da'u (以前言ったこと), di'e (次に言うこと), de'e (まもなく言うこと), da'e (のちほど言うこと), dei (ただいま言っていること), do'i (不特定の発話)
以前や以後や現在の発言を指す。
 
13.8)  li re su'i re du li vo
             .i la'e di'u jetnu
       2+2=4
             今言ったことは正しい。
メタ言語の代スムティの暗黙の数量詞は su'o (lo に似て、実際の発言を指すから)

関係代スムティ

ke'a 関係節の中で使われる(第8章)。
 
13.9)  mi viska le mlatu ku poi zo'e zbasu ke'a
              loi slasi
       私はプラスチック製のその猫を見る。
# xorxes が出した新案では NOI 類がスムティだけでなくセルブリも修飾できる。 その場合、例 13.9) の ku が無いと、 poi 節が le mlatu ではなく mlatu だけに係る。意味は大して変わらない。

疑問代スムティ

ma
その位置にどのスムティを入れるとこの命題が真になるか尋ねる。
 
13.10) do klama ma
       あなたはどこに行きますか?
疑問代スムティの暗黙の数量詞は su'o :聞き手はその命題が真になるような少なくとも1つのスムティを答えるように要求されているが、そうなるような全てのスムティを答える必要は無い。

14. 引用のまとめ

引用は4種類ある(第19章):文引用・単語引用・一語引用・非ロジバン引用

文引用

lu [文法的に正しいロジバン文] li'u
 
14.1)  mi cusku lu mi'e djan. li'u
       私 言う [引用] 私はジョンです [引用終了]
       私は「私はジョンです」と言う。 

単語引用

lo'u [単語列] le'u
意味のある文としてでなく、単語の集まりとして引用する:
 
14.2)  mi cusku lo'u li mi le'u
       私 言う [引用] li mi [引用終了]
       私は「li mi」と言う。

一語引用

zo [単語]
一語のみを引用するので、複合機能語を引用することはできない。
 
14.3)  mi cusku zo .ai
       私は「.ai」と言う。

非ロジバン引用

zoi [非ロジバン] (zoi)
言葉でないものも引用できる。
 
14.4)  mi cusku zoi kuot. I’m John .kuot
       私は “I’m John” と言う。

引用の暗黙の数量詞は su'o (lo に似て、実際の単語や単語の列を指すから)

15. 数のまとめ

第18章で詳述。

li [数] lo'o

 
15.1)  li vo
       数 4
       4
 
15.2)  li re su'i re
       数 2 + 2
       2 + 2
 
15.3)  li .abu bopi'i xy. bote'a re su'i by. bopi'i xy. su'i cy.
       数 a [接続・短]掛ける x [接続・短]累乗 2 + b [接続・短]掛ける x + c
       ax2  + bx + c

me'o [数値ではなく数式]

# 末端の境界詞は lo'o
 
15.4)  me'o vo
       「4」

15.5)  me'o re su'i re
       「2+2」
例 15.4)例 15.5) は違うものを指す。

数と数式の暗黙の数量詞は su'o (lo に似て、実際に数であるものや数式であるものを指すから)